臭末のラグナロク~輪廻~
「輪廻」
サンスクリット語のサンサーラに由来する用語。命あるものが何度も転生し、人だけでなく動物なども含めた生類として生まれ変わること。
生きてる生きている。その現(うつつ)だけがここにある。生きることは、すなわちサンサーラ。嗚呼。
これは、とある男ととある生命体の、因縁の物語である。
緑色の生命体との聖戦は決した。呆気ない幕切れであった。
数年後。日本のとある場所。夏の終わり。私は買い物のために移動手段である車へ向かっていた。暮れ始めた空をよそに、車のドアを開ける。
聞き覚えのある羽音が耳元を支配した。私の身体は一瞬にして硬直した。
まさか....
あの日の決着は慟哭とともに着いたはずである。まさかそんなことが。辺りを見渡すと、私が想像していたあの生命体の姿は見えなかった。ホッと安堵した後に運転席へと臀部を預けようとする。
聞き覚えのある羽音がまた聞こえた。気のせいではなかったのだ。やはりあいつは、そばにいる。しかし、見渡せどどこにもその姿は認められない。言い知れぬ不安を感じながらも、鋼鉄のトロイに乗ってしまえばその不安も払拭される。そう信じて中に入りドアを閉めようとしたその瞬間。私は生涯二度目の終末を目の当たりにした。車内の運転席と、フロントガラスとの小さなスペースに存在していたのだ。そしてその終末は、黒い鎧に身を包んで巨大化していた。
私は、再び慟哭した。
転生編へつづく